~秘メゴト~
 高校3年生になった有はまた背が伸び、輪郭はシャープになったものの、繊細で端正な顔立ちは変わってはいなかった。

 勿論、姫乃の大好きなあの奥深く透明に煌めく、ロシアンブルーのような青灰色の瞳もまた、変わってはいない。

 姫乃は無意識に胸元のボタンをそっと握りしめた。



「これから寝技やるから、タイム計って」


 有は姫乃にストップウォッチを手渡しながら、タイムの計り方や、部員への時間の報せ方を細かく教えてくれた。


 意外なことに、大まかな仕事内容しか伝えなかった主将に対して、細々としたことを指導してくれたのは、有だったのである。




 ―…私、マネージャーとしてここに、先輩の傍に居てもいいんですか…?


 姫乃の胸は、嬉しさでほっこりと温かくなった。





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