~秘メゴト~

暗闇

 姫乃は柔道部の部室でひとり、何日も姿を見せない有を想い、彼の道着を抱きしめていた。

 知らず知らずのうちに、つうっと頬に涙が伝う。




 今頃、先輩は何をしているのだろう。

 事故にでも遭ったとか? …ううん、それなら学校に連絡が入るよね…。

 齋藤先生も木村先輩も、何の詳細も聞いていないと云っていた。


 脳裏には悪い考えしか過ぎらない。

 普段は明るい姫乃も、流石にマイナス思考になってしまう。


「せんぱい…何処にいるの?」


 一層強く、有の道着を抱きしめたその刹那。



 部室のドアが勢いよく開き、髪を乱した有が入って来た。





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