~秘メゴト~

苛まれる日々

 その朝、予定日より一週間遅れで生理がきた。


 どきどきした。はじめて。


 もしも、赤ちゃんができてしまったら…どうしようと悩んだ一週間。


 凄く、ほっとした。


 おかしいかもしれないけれど、妊娠しなかったことに安堵した訳ではない。


 先輩を自由にしてあげる、きっかけが出来たことにほっとしたんだ。

 生理がきたことを告げたら、きっと先輩も安心して私から去っていけるだろう。

 それでいいのよ。


 先輩の傍に居られた日々のことは絶対に忘れない。

 表情のひとつひとつ、言葉のひとつひとつ、すべて心に仕舞っておくから。


 今日、先輩に告げよう。


 そして、元の日常に戻るんだ。

 先輩を目で追う日々に。


 でも、余り長く傍に居すぎたから、私はその寂しさに堪えられるだろうか?


 ああ、あのボタンが欲しい。

 先輩に会えない二年間を埋めてくれた、私の宝物。

 お願い、私に勇気をちょうだい。



 私から、先輩と離れる、勇気を。





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