サボタージュ
ブラックコーヒー

 「おはよう」

 これが、栗山が初めて発した台詞だった。もう、よい子なら寝ている時間なのに。僕達は、初めて会ったのに。



 古ぼけたアパートを遠目に見て、高級そうな車が、止まっていることに気づく。

 近づくと、その車が外車である事がわかる。外側から見て、運転席が右側にある。

 そんな事はどうでもいい。なぜ、こんなものがあるかだ。このアパートの住民は、僕を含めて、お世辞にも裕福な生活をしている、とは言えなかった。

 裕福な人間は、裕福でない人間とは付き合わない。だから、今までに、このアパートに外車が止まる事は一度もなかった。

 嫌な予感がする。

 自分の部屋のドアの前に立ち、また同じ予感がした。ここが、自分の家でないような気さえした。

 その予感は当たった。ドアノブを回すと、ドアが開く。鍵穴に鍵を、通していないのに。

 泥棒に入られ、何かを盗まれたかもしれない。その予感も、当たった。半分は。
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