蝕む月と甘い蜜
2度目の出会い
いつも通りの仕事を終え、
夕方の道に車を走らせながら
櫂斗はチラリと腕時計に
目を落とした。
予定の時間まではまだ
余裕があるが、はっきり言って
この後の会食に櫂斗はあまり
気乗りがしていなかった。
櫂斗が父親から社長として
会社を引き継いでから3年目。
カジノの経営に政治家の
バックアップは欠かせない。
しかし彼らの的を得ない話は
どうも好きになれなかった。
似ているのは彼らも櫂斗も
夜を好むことくらいだ。
その点はありがたいが。
季節が移り、長くなり始めた
昼の光に櫂斗は目を細めた。
夏は苦手だ。
これから迫る季節に櫂斗は
そっと溜息を漏らした。