サクラノコエ
(6)理紗への想い


仕事を上がると俺は、猛ダッシュで着替え、ハットでつぶれた髪を直す気持ちの余裕もなく店を出た。

足早に待ち合わせ場所に向かいながら、ケータイをチェックしてみる。

理紗からの返事はない。

田端と理紗の関係を疑い、上の空だった前半4時間。

田端の話を聞いて、さらに仕事が手に付かなくなった後半4時間。

途中から客の前で笑うことが出来なくなり、角倉さんに注意されオペレーション(調理)に回された。そこでもソースを間違えたり、グリルオーダー(特別注文。例:ピクルス抜き)なのに普通に作ってしまったり。

今日一日の仕事ぶりは、まさに最悪なものだった。

俺の高校の先に少し入り組んだ住宅街がある。

理紗と以前別れたのは学校から4つ目の角を曲がってすぐの路地だ。
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