サクラノコエ


理紗との付き合いは、ちゃんと続いている。

夏休み中は、俺が忙しかったからあまり会えず、主にメールだった。

メールで会話している分には、今までとなにも変わらない。俺と理紗との他愛のないやりとり。

会うときは今まで通り15分程度。

人格の交代に時間は関係ないようなのだが、理紗がそれ以上一緒に過ごすことを避けているみたいだ。

そのお陰なのか、あの日以来目の前で人格の交代を見ていない。

人格の交代が起こらなければ俺たちはごく普通のカップルで、時々あの日のことが夢だったような気がしてしまう。

「これ」

「ん?」

「あのね『小さい女の子』が描いた絵」

理紗はあの日以来、俺のことを信じてくれているらしく、他の人格のことを口に出すようになった。

そういう話を聞くと、やはり現実なのだと妙に実感する。
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