サクラノコエ
俺はとりあえず涙が滲んだ目をごまかすため、あくびを装った。

だけど、焦るあまり

「ししゃもが、じっとこっち見るから……」

などと、訳の分からないことを口走ってしまい、ごまかすどころか逆に挙動不審になってしまった。

俺のおかしな行動を母さんが見逃してくれるはずがない。案の定、母さんはわざわざ弁当を作る手を止めて、自分の席に腰を下ろし、いつものように物言いたげにじっと俺の顔を覗き込んで来た。

「なんだよ!」

そんな母さんの行動を鬱陶しく感じ、つい言葉がきつくなる。

母さんが俺を心配しているのは空気で分かるが、その空気が俺をイライラさせた。
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