散らないサクラ


血塗りの獅子、そう呼ばれるようになったのはいつだったのか覚えていない。

暴走族“コスモス”の作ったのをいつだったか覚えていない。

南町の暴走族のトップを取ったのがいつだったのか覚えていない。

強さの値の異名、族の総長の座。


誰が望んだ?


そんなものは望んでもいないもの。

手に入れても満たされない、手に入れても刺激が足りない。

本当に欲しいものではないから。

じゃあ、本当に欲しいものはなんだ?


……分からない。


何が欲しいのかも分からない。

ただこの現状、日常に苛立ちを感じて生きている。

朝、昼、夜の繰り返し。

時間だけが過ぎていくのが歯がゆいと思っていても、時間に勝てない。

たいくつな時間だけが流れていく。




そう思っていた矢先に、あいつは現れたんだ。



「獅堂秋羽(しどうあきは)、アンタを迎えにきたよ」



――――桜吹雪が吹き荒れた。





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