散らないサクラ

初めてだった、何かを誇りに思い、そこにいられる事に感謝したのは。

まだたった20年しか生きてねえけど、でも、それは俺にとっては大きい事で。

正直、嬉しかった。柄にもなく……、嬉しかった。



でも、思った。



コスモス以上に、俺は守りたい、愛しいと思う存在がある。

そのものを守るためには、コスモスは重たい。

コスモスとその人を守るには、俺には器用さが足りない。


自信がねえんだ、情けねえけど。


二頭追うものは一頭も得ず(あってんのか?)、って言う諺があるように、俺はコスモスとあの人も、同時に追ったらどっちかを失う気がしてたまんねえ。



いい機会だと思った。

コスモスが大事だと気づけたからこそ、潔くそこから退く事ができる。




……新しく、“俺”と言う道を歩けるように。




騒がしくなった室内を瞳で制する。

徐々に静かになった中で、俺は口を開いた。




「……暇つぶし……、いやちげえ。逃げで作ったチームだった、ここは。愛着なんてねえ、仲間なんて知らねえ、ただその時、その瞬間を逃げてりゃあ良かった」



ただのガキの言い分だ。

俺は何もしてねえ、こいつらが勝手についてきただけだ、と。



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