恋する季節の後ろ髪

 あんまりにも潔い顔でいうものだから、なんだか向日葵のようで。

 きっと今後向日葵を目にする度に、私はこの人の笑顔を思い出さずにはいられないだろう。

 そう確信する。

 だから私はもう1度、


「嫌な人ね、やっぱり」


 そういってやる。

 互いの足枷(あしかせ)にするわけじゃなく。

 甘い傷跡にするわけでもなく。

 例えるなら、そう。


──“フォトフレーム”


 色々な想い出を、様々な時間をそこに飾るフォトフレーム。

 主役はその中の写真で。

 それは決して主役にはなりえない。

 けれど、幾度そこに飾る写真が替わっても、それは変わらない。

「じゃぁね」

「気をつけて」

 背を向ける。

 今はまだ、飾るもののない向日葵色のフォトフレーム。

 そっと内ポケットに忍ばせて。

 私は歩き出す。

 誰に合わせるでもない。

 私の歩幅で。

< 25 / 38 >

この作品をシェア

pagetop