Parting tears
「うわ~綺麗。今年はよく雪が降るね」


「こんなに綺麗な雪を見ていると、結麻に会いたくなるよ」


「そうだね。一緒に雪を見れたらいいのに」


「じゃあ、そうしようか?」


「えっ? 結構積もってるよ」


「そうだけど俺会いたい。ほんの少しでも結麻の顔が見たい」


「分かった」


 そう云って電話を切ると、傘も持たず私は雪の中家を飛び出した。待ち合わせは二人の家の中間地点である高山台公園。

 私は和哉に会いたくて、無我夢中で走った。途中転びそうになりながらも必死で公園を目指した。会いたい気持ちがそれほど強かったのだと思う。

 遠くから手を振りながら走る和哉が見えた時、私はどれほど嬉しかったことか。

 丁度、二人が走り寄って、高山台公園の前にある街灯の下で思い切り抱き合った。
 雪が降る中それは幻想的で、そんな自分達に酔いしれてしたのかもしれない。


「結麻、傘持ってないなんて、初めてのデートの時みたいだな」


「和哉も今日は傘持ってないんだね」


 顔を見合わせ笑った。この時の私達は、ただ少しでも会えるだけで嬉しかったから。


 いつからだろう、だんだんと和哉との関係に変化が生じるようになっていった。

 雪も溶け、春になる頃には二人でいても、それが当たり前のような感覚だったのか、些細なことで喧嘩になったりもした。会う約束の日、私が仕事で行けなくなったことや、待ち合わせに遅れてきて謝りもしない和哉のこと。お互い不満を持ち始めたのかもしれない。

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