午前0時のシンデレラ

人々が何事かとあたしたちを見てるけど、そんなのどうだっていい。


目の前のこの男を、あたしの視界から消して欲しい。


「あんたが!あんたが何もかもあたしから奪ったんでしょう!?」


「お嬢様、行きましょう」


「あんたなんか、あんたなんかっ…!」


もう、自分でも何が何だかわからなかった。


涙が出そうになって、それを堪えるのに精一杯で。


あたしは柳に引きずられるようにして、池田から離れた。



会場から少し離れた椅子に、柳はあたしを座らせる。


そして柳は、あたしの視線に合わせて屈み込んだ。


「…落ち着きました?」


「………」


あたしは柳の視線から逃れるように、俯いた。


…"最悪"。


今の気分にピッタリな言葉は、これしかない。


「…ごめんね。迷惑かけて」


床を見つめたまま、あたしは口を開いた。


柳がいなかったら、あのまま池田に殴りかかってたかもしれない。


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