秘密の鎖





目を開けると







夕月さんがいた。






「ぎゃーっっ!!」


「何でだよ、何もしてないのに」


「い、いや、びっくりしちゃって…」


夕月さんは私の反応に不満そうだった。


そりゃそうだけど。


「あれ、こころさんは?」


思い出してあたりをキョロキョロ見回すと、夕月さんが体温計を差し出しながら言った。


「熱計って。姉さんはさっき帰ったよ」


私は体温計を受け取って熱を計った。


お礼、言いたかったな。
私が寝てるときも何回か様子見に来てくれてたし。

みんなに迷惑かけちゃって、
ダメだなぁ、私。


体温計がピピッと音を鳴らした。

体温計を取り出して確認すると、
夕月さんに渡した。


「お、だいぶ下がったね」


「うん」


「お腹すいてない?おかゆ食べる?」


「え…」


思わず固まってしまった私の頭をくすくす笑いながらぽんぽんと叩いた。


「大丈夫、姉さんが作ってってくれたやつだから」


「じゃあ食べる」


「おい」


夕月さんは私の頬を軽くつねっていったけど、
ちゃんとお盆に乗っけた温かいお粥を持ってきてくれた。

お粥には細かく切った野菜や卵が入ってておいしそうだ。


「食べさせてあげようか?」


「心配ご無用!!」


楽しそうにスプーンを持って構えている夕月さんの手からスプーンをもぎ取った。

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