プレーン
お坊っちゃん
今朝は雨だった。
昨日も雨だった。

やみくもに降り続ける雨粒が、ときおりガラス戸にぶつかっては跳ねる。

そして僕は、いつも通りに目覚める。おはよう。

部屋の中は薄暗くて、バランスを失う。でも大丈夫。しばらくこうして、じっとしていれば。

じっとしていて気付いた。
視界に入るいつもの部屋が見慣れない。おかしい。

僕の安アパートにエアコンなんてないし、窓際には冗談みたいにデカいりらっクマ。
コイツを買う金は、何日分の食費になるだろう……。一週間か、ごりおしで一週間と四日。
……。

「あ。」

勢い眠りの中から突き出されて、ようやく現実的な不安が込み上げる。
自分の体温が染みた布団が、敵に変わっていく。

ここはどこ。

幸い自分の事は分かる。よし。
僕は僕だ。ナツメ。
じいちゃんが文豪オタクで、こんな恥ずかしい名前を付けられた不憫なヤツ。それが僕。

で、そのナツメと言えば、文学オタク。
作家じゃなくて、作品が命。よし。よし大丈夫。


……大丈夫なもんか、泣きそうだ。
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