無口なDarling



あの時たしかに澄子の姿があった。俺の教室に入ろうとしていたのに、くるりと方向を変えてしまった。


あの言葉を聞いてたんだと思う。あの女に、言い返してやろうと思ったけど、あんな女に「あいつの弁当は美味いよ」なんて言ったってしょうがない。



言うなら澄子に直接言ってやりたい。




いつも俺が食べるのを見て、不安そうな顔をしていたから。 「うまいよ」って。澄子の顔を見て言ってやりたいんだ。



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今日もコンビニで買ったパンを二人で食べて、屋上でゴロゴロしていた。そして昼休みが終わりそうになった時、猛が呟いた。



「・・・お前さぁ・・・」


寝ッ転がっていた体制を直して、猛の方へ振り向く。


「何?」


「なんでもね。昼休み終わる。戻ろうぜ」


ふいっと顔を背け、食べたごみを持ち屋上を出て行ってしまった。



猛はすぐ途中で話を終らせるから・・・



私は軽くため息を付いて、猛の後を追うように屋上を出た。



授業中、人気のない授業のため先生の話を聞かずに私は隣の席の親友に相談を持ちかけた。


もちろん内容は愛妻弁当のこと。私が作らない理由を話すと、親友の千代は


「柚木くんって、お弁当とか食べるんだぁ!意外!手作りとか嫌いそうだよね?」


っと言った。


・・・・そうなのかな?本当は嫌だったのかな?


「澄子と付き合う前に、柚木くん、女の子が調理実習で作ったマフィンあげてたの断ってたし。」


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