【中編】ひとつの愛



バサバサっと全ての本が落ちた後、静かな時間が流れた。



「あっ、碧君、大丈夫!?」



腕の力を抜き、胸元に抱え込んでいた愛姫を覗いた。


良かった……


怪我はなさそうだな。



「ごっ、ごめんね?」



俺の中にスッポリと入っちまうくらい小さい。


何で、いつからこんなに



女の子なんだよ。



「もう座ってろ」



俺のシャツをギュッて握ってた手を離し、愛姫と距離をおく。


こんなに密着してたら俺の心臓もたねぇから。


何も言わず、ゆっくりと受付へと戻って行く愛姫を見て


ホッとした。


胸が苦しくて、イタイ。



ふわっと香った甘い匂いに酔いそうになる。

思わず抱きしめたくなっちまう。


まだ残る香りに、胸の痛みは中々治まらなかった。






< 15 / 159 >

この作品をシェア

pagetop