君の詩を聴かせて







 何人かの女子に話し掛けられた。

 ボタンが欲しいって言われて、手を掛ける。

 けど…さっきの円香の嬉しそうな顔と、悲しそうな顔が思い浮かんだ。

 頭から離れなくて、断って帰路につく。

 思い浮かんだのは、やっぱり円香のこと。

 気付いてない訳じゃ、なかった。

 自分に向けられる好意も。

 けど俺はそれに応えられないから、気付かないフリをしていた。

 俺は同じ気持ちにはなれないから…。

 胸の奥がモヤモヤしたまま歩く。

 そして…うずくまってる、円香を見つけた。

 …泣いてるの、かな。

 だったら放っといたほうがいい。

 …でも俺には、そんなこと出来なくて。

 酷い奴…なんて思って、自嘲した。


「…円香、打ち上げあと30分くらいで始まるらしいけど」

「っ…あ、ごめん…!」


 いきなり立ったせいか、ふらついた円香。

 手首を掴んで先を歩く。


「…大和っ?」

「遅れたら困るんだろ」


 こんなの、残酷だってわかってる。

 俺はもう、円香に関わらないほうがいいって。



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