君の詩を聴かせて



 黙って渚さんについていって、部屋に入った。

 音が溢れてる室内。

 軽音部の部室、かな。


「ちょっと待ってて」

「うん」


 渚さんが人だかりに入っていく。

 思ってたより人がいる。

 部員の様子を遠くからボーッと眺めた。

 そう言えば、琉愛に


「大和は折れる」


 って言われたんだっけ。

 …確かに折れたけど、助っ人としてだし。

 ……琉愛って予言者か何かか?


「蕪木こっち来てーっ!」

「…はあ」


 のろのろと歩く。

 渚さんと、手首に包帯を巻いたギタリスト。

 この人の代わり、か。


「こいつ安部 太一ね」

「どーも」

「どーも…蕪木 大和です」


 上履きの色が違うから年上か。

 あーもう俺、人見知りなのに。

 交遊関係は狭く深くが好きなんだけどな…はあ。

 差し出された手を握って握手する。

 俺の手よりも硬くてがっしりしてる。

 …大分前からやってるんだなぁ。

 俺1年もやってないのに代わりになれるかな?



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