君の詩を聴かせて

―きっかけは君




 飛び上がる人々。

 包まれる熱気。

 ギラギラと照らしてくるライト。

 滴る汗をTシャツで拭って、客席を見た。

 ――今日は渚さんのバンドのライブ。

 ライブハウスなんて初めてだし、エレキギターも初めてだから大変だった。

 軽音部で練習して家でも練習して

 音楽漬けの生活は楽しい。

 それももう、今日で終わりだけど。


「じゃあ次ー、『恋してオトメ』行くよー!」

「わーっ」


 指を動かす。

 確かタイトル通り恋する女の子の曲だった。

 明るいのに、どこか哀しい曲。

 …渚さんの声がそうさせるのかもしれない。



< 80 / 104 >

この作品をシェア

pagetop