ソラルリラ―晴色の傘―
「本当に、凄い……」
 私はもう一度、感嘆の息を吐くように呟く。
 今まで見た、どんな風景より名画より本よりも、この1ページは私の心を鷲掴みにして離さなかった。
 こんなページが続く一冊の本……そこには一体、どんな絵でどんな物語が描かれているのか。
 見てみたい――。
 読んでみたい――。
 私の中の好奇心が、むくむくと首をもたげる。
「あれ? でも……」
「どうした?」
 いつの間にか背後に回っていたロップが、首を傾げた私の後ろから覗き込む形で首を突き出してきた。
 顔が密着しようと、今更何とも思わない仲だ。
「見て、この真ん中の緑。木……だとしたら、こんな大きな木、ソラルリラのどの町にも生えてないわよ? ……というか生えないわよね、こんな国だもの」
 指差した緑色は、絵の中では町を覆い尽くす程に大きい。
 現在も一向に止まない雨が屋根を濡らし、木々はもとより雑草さえろくに生えないぬかるむ大地に、図鑑でしか見たことがないような大樹など、生きられる筈がない。
 現に今、五つの町の中心に建つのは、何の為に建造されたのかも分からない立ち入り禁止の鉄の塔だけだ。
「それもそうだな……」
「でしょう? この“雨の国”の別称で呼ばれるソラルリラに、大きな木? 信憑性がまるっきりないじゃない!」
「楓の国紋は?」
「偽物よ偽物。最近は国の外から輸入した品物に偽の国紋をつけて、国産だと偽って値段を吊り上げる悪徳商人もいるみたいだから」
 ロップはそれでもまだ、このページのないようだ。
「でも……そう! こんな紙切れを、軍の奴らが後生大事に保管してたんだぜ? それにほら、古代語。五十年も昔なら“タイヨウ”だって出てたんだし、でっかい植物が生えてても不思議じゃない。まあ、真贋の程は俺には分からない……けどな――」
 そこで言葉を切ると、彼は私の正面に回り込んで鳥のように両腕を広げ、楽しそうに笑って言う。
「お前も魅せられたろ?」
 この一言が、私にとって特別に特別な一週間の始まりの合図になった。
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