ヒレン
第7章 懐古

Verabredung ~婚約~

「おめでとう。安物で悪いけど」



智子の左手を取ってそっと和真は薬指に指輪を落とす



細めのシルバーのリング



「和くん?これ…」



「一応婚約指輪のつもり」



聞こえた言葉が現実に思えなくて指輪と和真の顔を見比べる。



「ホント。卒業したら結婚しよう」



「…うん」



冷たい11月の風。


誰も来ないはずの講堂裏。


世界は二人っきりだと思った。



5年生となり本格的な臨床実習が始まったためかなり忙しい生活。



すれ違いばかりで不安だった私の心に灯った光。



でもね…不安なの。

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