短編小説の集い。
春の陽気に包まれたある日。
僕とえり、バスに乗って富山市内の水族館へ向かう事にした。
市内に近づくにつれ、乗客も増えるが、えりは一向におしゃべりを止めようとしない。
周りから冷たい視線が送られて、僕は何とか、えりを静かにしようと試みた。
「でさぁ、なーつー」
えりの口の前に人差し指を立てて、口で「しっ」と言った。
するとえりはふくれ面をして、不機嫌そうに自分の口にチャックをする真似をして、そっぽを向いた。
バスから降りても、えりはふて腐れた表情をして、聞く耳を持とうとしない。
「えり……」
いつもなら横を歩くのに、ずかずかと早足で先を進もうとする。