白は花嫁の色

おじさんは、中年の女性客が俺目当てで常連になったからと笑い、尚も封筒を渡してくる。

けれど「五百円が約束ですし」と断った。

――揺らがない訳ではない。向こうからの好意なのだから。

だけど金を稼ぐ大変さを知ったのだ。

料理の材料費、光熱費、人件費、――例えばたった百八十円のだし巻き卵だって、立派に金がかかっている。

つまり、俺が市井家にとってひどく負担になっているということで――


俯いた俺の頭をおじさんがトントンと叩いた。脳みそが裏返った気がした。

「雅くんのお陰で女性がデザートを頼むから儲かった。お礼だ」

「っ、ありがとうございます!!」



ありがたくいただいた。

――だって封筒に<ご褒美>って書いてあるんだ。

優しさに胸があったかくなる。こんな風に人の気持ちが汲み取れる大人になりたい――


単純な人間だから、帰り道はすごく短く思えた――


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