白は花嫁の色
「あー、覚えてるよ、うん」
「甘いの、もう一回食べたいね?」
たかがケーキの味なんて覚えてるものなのだろうか。そんなに美味しかったのだろうか。
美味しいケーキよりも俺は本当はホットケーキが食べたいけれど。
姉ちゃんがもう一回食べたいのは――…ああ、考えたくない。
どこか遠くを見て話す姉ちゃんを、“ここ”に居る子供の俺は見たくなかった。
――俺だけを見てくれたらいいんだ、月なんかじゃなくて。
嬉しそうな笑みを浮かべ、三角座りの膝に頭をことんと転がし、
「冗談だよ?雅が居て。お父さんとチビ三人椿、茜、実が居ればそれでいい。ふ、名言でしょう。
それに私、お肉嫌いなんだよねー、甘いモノも苦手なんだー。太るし」
「………そうだったね」
祈り事があるなら流れ星を探すために空を見上げきゃならないが、
俺の探しものは目の前に居るから、やっぱり夜空を見る必要なんてない。
…本当は嘘だって知っている。
肉も魚も米も甘いモノも苦手だと言って、姉ちゃんは食べ盛りな俺と椿に自分の分を譲っている。
――我慢しているのは姉ちゃんばかり。シンデレラみたいだ。
さっきまで笑顔で月を見ていたのに、急に真面目な顔を俺に向けた。
瞳の奥に居たいから――
「雅、受験受かってね。絶対受かってよ?西高校受かってね。
それからバスケも頑張ってね、中学最後じゃん?応援するからね?」
合間に「うん」と何度も相槌を打ちながら、俺は姉ちゃんの瞳に居る自分を確認していた。