不器用なカノジョ。
耳に届くのはキミの声だけ
「よーし、今日は2,3年生対1年で紅白戦を行う」
ひろが泣いたあの日から10日以上が経っていた。
梅雨も抜け、夏休みまっしぐらになったある日のことだった。
「我が校伝統の紅白戦だ。
ここで活躍した生徒には学年関係なく、レギュラー獲得のチャンスが近づく。
1年生もはりきって試合に挑むように!。
それと1年は俊輔中心に全員で力を合わせろ!」
その監督の声で2,3年と1年にチームが別れる。
「ついに来たな、この日が」
純がそう言いながら俺の肩を叩く。
「俺、絶対レギュラーになるから」
「いや、何決めてやった、みたいな顔してんだよ。
俺だって負けねーからな」
純に人差し指を向けニヤッと笑う。
「よーし!さっそく会議すっぞー!」
張りきって俺は大声で叫ぶ。
その声に1年全員が集まる。
「やけにはりきってんな、俊輔。
なんかあったのか?」
健が怪訝な顔をして聞いてくる。
よし、特別だ。
お前にも教えてやろう。
「そりゃあレギュラーになれるかもしれないんだからな、誰だって張りきるだろ。
それに…」
「それに?」
「ひろが今日の紅白戦、見に来るんだ」