紅い涙
序章

悲劇の前奏

ヒター…。
ヒター…。


余分に聞こえる、渇いた足音。


「誰!?誰なの!?!?」


立ち止まると、同じようにあいつも止まる。
同時に聞こえる、甲高い笑い声。


「ひ…ヒっひぃ………」


ゾクッ………。


アイツの笑い声に、背筋が凍る。

まさか…まさかコイツは……。


「あたしは……」


そう言い、アイツは月を背景に…


「いやあぁァァ…………っ!!!」


銀色に輝く、ナイフを振り上げた。


「お前…はっァ゛…」


グチャァ…。


「あたしは…くれ女よ」



綺麗…綺麗よ、アナタ。
ねぇ、ちょうだい?
真っ赤に染まった、アナタのその、右腕……。


くれ女。
真夜中の徘徊者。
血で汚れた、哀れな女ー…。
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