桜の記憶


変な会話だ。
ぎこちなくてカチコチと固い。

なんとなく気まずくて、
やっぱり立ち去ろうと背中を向ける。


「琴子さん」


その声に、私は足を止めた。

まるで、ひらひらと振ってくるような声。

呼ばれた名前は、
桜の淡い色を含んで私の胸に落ちる。


「は……い」

「また明日」

「え?」

「会えたらお話してください」

「……は……い」


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