桜の記憶


「隆(タカシ)さん……」

「ばあ、誰? 隆って」

「お前のひいじいちゃんの名前だよ」


私は笑ってひ孫を見る。

夫によく似た強い眼差しが、
桜を見つめていた。


「桜、綺麗だねぇ。ありがとう」

「へへ。たまにはばあ孝行しないとな」


ひ孫の笑顔が、今までで一番頼もしく見えた。

< 28 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop