夜が明ける前に
「……なんだこれ。」
「加代の、字だな」
《父さん、兄ちゃん、京香さん、ついでに藤元へ。》
そう書かれた一通の封筒が、勉強机の真ん中に置かれている。
「…俺はついでかい。桜木らしいなー。」
「加代、いつの間にこんなの書いたのかしら…」
「…とりあえず開けてみるか。」
「………ああ。」
糊付けされていない封筒には、二つ折りされた便箋が二枚入っていた。
カサリ、と音を立てて開けば文字が書かれている。
「……親父、読んで。」
「ああ。――…父さん、兄ちゃん。先にいなくなっちゃってごめん…」