溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
私にも笑いかけてくれるようになっていたけれど、今友達に向けている表情とは全く違う。

心から笑っている明るい笑顔。
病院ではいつも不安気味な表情と仕草。
入院当初の荒れた様子はなくなったけれど、体中が震えているようで。

私を近くに置いてくれても、心全てを解放してくれたわけじゃないって、気付かない振りをしていた。

病院という環境の中だけの脆く現実離れした関係に、未来はないんだなあって知らされてしまった。

入口の近くにいた濠達と
立ち尽くす私の距離は近くてほんの5メートルくらいなのに…あまりにも遠く感じて泣きそうで動けなかった。

明るく楽しい外の世界を持つ濠から目が離せないくせに…濠は私とは違う世界で生きてるって実感して足がすくんだまま。

しばらくして、何の前触れもなく不意に濠の視線が私に向けられた。

『やっぱり』

とでもいうような笑顔を向けられて

おいでって手招きされた。
友達も私を見て興味津々で私が側に行くのを待っているから…半分強制的に近い気持ちのまま、足がゆっくりと濠へ向かって動き出す。

濠の背後に立った時、

『薔薇の香りに気づいた』

と書かれた落書き帳…。

「薔薇…?」

私の口元がそう呟いたのを理解したのか、軽く頷くと

『透子の薔薇の香り』

と書いている。



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