溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
少し辛そうに、遠くを見つめながら…でも視線は何も捉えてなくて。

「生きていてくれれば
それでいい…って俺と同じ気持ちなんだ。
俺は、濠の後何年もかかって柚に再会して…やっと濠に追いついて。

高校生の時の恋愛を未だに大切に育ててるっていう同じ運命の男だから…。

だからわかるんだけど。

形はどうであれ、濠には透子ちゃんのいない人生は存在しないんだよ。

濠が大賞受賞の事を知って黙っていたなら…何か理由があるんだろうけど、その理由には透子ちゃんを手放すなんて選択肢は確実にないから。

透子ちゃんも、逃げられないって腹据えて付き合った方がいいよ」

「逃げられない…」

「俺が柚を…柚の人生を俺に縛り付けてるように、生きてる限り濠は透子ちゃんを側に置いて生きていくはず…。
ま…俺の言う事に間違いはないから。
透子ちゃんは覚悟しておくように…」

くくっと笑う健吾さんは
これまでに見た事のないような明るい色の目をしていた。
体が万全ではない柚さんが命懸けで出産をして、健吾さんは何かを乗り越えて更に素敵になった気がする。

「透子ちゃんが生きてるってだけで…側にいるだけで濠は幸せなんだから。
それに甘えて、濠にしがみついてればいいんだよ」

「健吾さんも…?
柚さんが生きてるだけでいいって…」

小さな声で問う私に、何の迷いもない声で。

「あぁ…。柚が生きていて、二人で話せる未来がどれほど欲しかったか…」

聞こえた声は、まるで心の奥からこぼれてくるよう。
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