童話少年-NOT YET KNOWN-

鬼道



怯んだのは、思った以上に足音が響いたからだ。
広い屋内には、大型の機械が設置されていた跡だけ残っている。
きっとホームレスや、遊び半分で忍び込む若者の溜まり場になってしまっているのだろう。
足許には厚い埃が斑に層を作っていて、あちこちに酒瓶や空き缶や煙草の吸殻、段ボールなど、大小のゴミがひたすら散らかっていた。

そのせいかは分からないが、臭いもひどい。
果物が腐ったような鼻を突く臭い、古い油の臭いと、そして明らかに新しい、鉄臭いものが、混ざり合っていた。

「間違いねーかな……」

少し鼻にかかった声をあげた紗散は、鼻を押さえながら床を見ていた。
厚く積もった埃の上を何かが引き摺られたようで、ところどころに大きな綿埃が見える。
一直線に埃がどけられたそこには、墨の乾きかけた筆を力強く半紙に擦り付けたような跡が残っていて、それは明るいところでみればきっと、赤黒いはずだ。

その足跡が向かう方を、目を細めて睨んだ。
それは、ぴたりと閉じた大きな扉の下に消えている。

「あそこ、に……鬼道が……?」
「待てよ、まだわかんねぇ」
「下手に動かない方が、いいんじゃないかな……」

4人とも、口数が明らかに減っている。
心臓がばくり、ばくりと動くのを、弥桃は扉を見つめたまま感じていた。
緊張感には慣れていないのだ。


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