童話少年-NOT YET KNOWN-

『あれ』




「碓井泣いたらウケね? 写真撮ろーよ、ケータイじゃなくインスタントで。現像して皆に送り付ける。じやなかったらデジカメで撮っといて、同窓会のお知らせハガキに使ってもらう」
「出席・欠席じゃなくて泣いてる碓井・泣いてない碓井みたいな?」
「やっべぇってソレ! バカじゃねーの!」
「どっちがどっちだよ!」
「『何だ! 何なんだ、お前は!?』」
「ちょ、やべぇ、似てる……!!」
「ちょっと、紗散も、涓斗も! 手伝ってよこれ。てゆうかうるさいよ」
「ってぇー」
「なにすんだよー」

部屋の隅でしゃがみこんでバカ話に明け暮れている2人の頭に、ぽこりと軽い打撃が降ってきた。
雉世が、丸めた雑誌を手にして眉を顰めている。
彼の手首のスナップが以前より良くなったのは、確実にこの2人のおかげだろう。
そんな雉世の肩越しに、小さな子供たちにひたすら絡まれている弥桃が見えた。

「てゆうか紗散の引っ越しでしょ。なんで紗散がサボってんの」
「あーはいはいすいませんっ! やるよー、やればいんでしょ」
「……本来なら合格決まったらすぐ準備始めるはずだけど」
「いやー、気ぃ早くね?」
「あそこの学校は寮入り早いんだって、受験する前から聞いてたはずでしょ」

保護者と被保護者のような会話を繰り広げているが、彼らも来月からは高校生だ。
涓斗は近所の工業高校、弥桃と紗散と雉世は揃って同じ公立高校に進路が決まっている。
紗散と雉世は孤児院を出て、学校の寮に入ることになっているので、今は荷物をまとめて引っ越し準備の真っ最中なわけだ。


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