童話少年-NOT YET KNOWN-
次は雉世が、眉を寄せて明らかな訝しさを表す番だった。
犯罪者に育てられ、犯罪者の思想を知り、その上でまだ厚かましくも、他人に嫌われないために羊の皮を被るような自分を、疎ましく思わない人間がいるものか。
自分を、というよりは、自分の境遇を、一度まっさらに洗い直したかった。
「別に雉世が何か悪いことしたわけでもねーのに、自分のこと最低な奴みたいな言い方して」
そんなこと、頭ではわかっている。
「自分のこと好きになれない奴は、他人のことも好きになんかなれねーんだってさ。涓斗ん家のおばさんが言ってた」
わかっているのだ。
自分に、他人を好きになる資格などない。
「でも」
そして、ただただ静かに声を発する弥桃には、そんな内心を全て読まれている気がした。
「自分のこと好きになれない奴でも……、好きになってくれる奴いっぱいいるけど」
「…………そう…………かな」
「たぶん?」
「弥桃お前多分ってなんだよー」
説教染みたわけでもなく、妙に青春臭いわけでもなく、特別琴線に触れるわけでも、とてつもない説得力があるわけでもなく。
一瞬後には普段と変わらない馬鹿騒ぎのノリに戻るのに、なぜかやけに、浄化される気がしたのだ。