童話少年-NOT YET KNOWN-



「そっか……紗散ん家の親は?」
「もう、どうしたのよ急に。央神さんとは会ったことなんてないわよ。ご両親、忙しくて紗散ちゃんともあんまり一緒にいられなかったんでしょ?」

聞いてしまってから、妙な質問だと自分でも思って、少し笑える。

紗散の両親は、今だってそれなりに有名で大きな玩具メーカーの経営に携わっていた。
聞いた話では、2人を含めた大学時代の友人数人で立ち上げた会社だったのだそうだ。
紗散と一緒にどころか日本にいることさえ少なかった2人が、偶然乗っていた飛行機が落ちたのは、太平洋のど真ん中だった。

両親と1年近くも会っていなかった紗散が、実感がないと言って、乾いた笑いを溢したのを、弥桃は今でも覚えている。

10歳になるかならないかという少女が、だ。
両親が亡くなった実感ではない。
・・・・・
両親だった実感がないと、微笑を浮かべたのだ。


(……あのときの、飛行機事故…………)

雉世の憶測は、あくまで憶測にすぎなかった。
しかし、考えてみれば確かに、妙だ。

物心つく前から兄弟同然に育ってきた幼馴染み3人が、揃って孤児だなんて。

恐ろしい考えを払拭したくて、弥桃はあの時、それ以上、雉世の話を聞く気にはなれなかった。


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