童話少年-NOT YET KNOWN-



「まだ乾いてねぇな……」
「鬼の血……、だろうね」
「普通こんなとこに血、付かないし」
「え、じゃあ、もしかして……ここに?」

ちょうど紗散や弥桃の目の高さにある看板の端と、工場入り口のシャッター枠に、黒く鉄臭い液体がべっとりと付いている。
鬼の肘もそのくらいの高さで、しかもなぜかこの時間に開けられている、現在は使われていない工場のシャッター。

答えを出すのは容易い。

紗散の声が、揺れる。

「なんで……よりによって、ここ」
「きっと全部調査済みなんだよ。相変わらず、やることがえげつないな……」
「……じゃあ、この中に……」


鬼と、ヤヨイと、────鬼道が。


誰かが息を呑んだ音が、聞こえるはずもないのに、聞こえた。


< 98 / 135 >

この作品をシェア

pagetop