幸福論
――やだ。
だって、苦手なんだもん、桂木せんせ。――
そんなことを言っていたはずなのに、生徒は素直に俺の後をついてきた。
180はある俺の身長とは逆に、150そこそこの小柄な生徒。
当たり前のように、歩調が合わない。足音がひとつ余計に聞こえる。
「早いか?」
振り返って尋ねる。
「いいえ。」
自分の担任と話しているときとは違う、静かな口調。
感情がわからない、静かな瞳。
「そうか。」
そう。じゃあ気にせず歩くさ。
一度はそう思って、さっきと変わらない歩調で歩いてみたが、どうも、後ろの足音が気になる。
気になる。気になる。気になる。
気になってしょうがないので、心持、歩く速度を落としてみる。
必然と後ろの歩く速度も落ちる。
なんだよ、最初から速いって言えばよかったのに。
なんで、こっちが気を使わなくちゃいけないんだ。
だから、苦手なんだ。
この生徒は。
だって、苦手なんだもん、桂木せんせ。――
そんなことを言っていたはずなのに、生徒は素直に俺の後をついてきた。
180はある俺の身長とは逆に、150そこそこの小柄な生徒。
当たり前のように、歩調が合わない。足音がひとつ余計に聞こえる。
「早いか?」
振り返って尋ねる。
「いいえ。」
自分の担任と話しているときとは違う、静かな口調。
感情がわからない、静かな瞳。
「そうか。」
そう。じゃあ気にせず歩くさ。
一度はそう思って、さっきと変わらない歩調で歩いてみたが、どうも、後ろの足音が気になる。
気になる。気になる。気になる。
気になってしょうがないので、心持、歩く速度を落としてみる。
必然と後ろの歩く速度も落ちる。
なんだよ、最初から速いって言えばよかったのに。
なんで、こっちが気を使わなくちゃいけないんだ。
だから、苦手なんだ。
この生徒は。