TIME
絶望の先に
「……発症…者」


俺は八城さんに向けてやっと言葉を捻り出した。



八城さんは苦笑いしうつ向きながらも微かに頷いた


「どうして分かったんだ?」


「あの時計、普通の時計じゃないのは何となくわかったよ」


八城さんはうつ向いた顔を上げて言った

「私も昔自分で選ばされたから……
うっすらだけど覚えてて、
1ヶ月前に高志君の机勝手に見ちゃって、
時計があって、
その時には電池の切れた時計だと思ったけど」


八城さんはそこまで言うと息を整えはっきり言った。


「この間この手を切った時に思い出したの、何でかな?分からないけど、何でだろ?」


そこまで言った八城さんを抱き締めた。

こうしないといつまでも無理矢理喋り続けて


そのまま壊れてしまいそうだから。


しばらく抱き締めていると八城さんは落ち着いたのか体を離して

ごめん

と小さな声で言った。


――この時から博美との距離は少し近づいた。

それから何日も経たず八城さんと呼んでいた名前は博美に変わり、
いつの間にか俺は高志と呼ばれていた。


--傷の舐め合いの延長線上の関係と分かっていても、寂しさよりはましだと感じた。

そう思っていた、二人だけで--
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