最高の君。



陽斗……?



「は、陽斗に何か用なの?」

「うん、ちょっと頼みたい事があって……」

「…、陽斗ならもうすぐ帰ってくると……」



――ガチャ



ドアが開く音。



陽斗が帰ってきた。




「澪音さん…?」

「陽斗君ちょうど良かったぁ!!
話があったのよ」

「話…?」

「ほら、アレ。
この前のパーティーの」

「あぁ…あの事ですか。
じゃ俺の部屋で話しましょう」



な、何なのよ!!



アレって何?


パーティーって澪音姉ちゃんも行ったの?



「…………」



陽斗の部屋に行く2人を見ながら、突っ立っていた。




どうしようもないこの気持ち。



陽斗と一緒に暮らし始めてだいぶ経った。



でも、同居人のあたしより、陽斗は澪音姉ちゃんに近い。



陽斗、


本当は澪音姉ちゃんが好きなんじゃないの?



美男美女でお似合いだし。



こんな状況で気付いてしまうのは


あたしの本当の気持ち。



陽斗の事を“好き”と認めてしまう。




そんな気持ち。




「ねぇ…澪音姉ちゃんと何話してるの…?」



呟いた言葉は空気にのまれる。



返事は返ってこない。



陽斗の部屋で、2人きりの空間。



それをただ呆然と見つめるしかないあたしは、無性に悲しい。

切ない。



気がつくと、泣いていた。



その涙を咄嗟に拭う。



こんな経験がないあたしは乗り越える術を持たない。



早く……


早く出てきてよ……。



澪音姉ちゃんと2人きりにならないで……。




そんな気持ちで溢れていた。



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