蜜林檎 *Ⅱ*
車に乗り込もうとドアに
手をかざした時
樹の携帯電話が鳴る。

「杏、先に乗って」

樹は車の傍に立ったまま
電話に出た。

「もしもし・・・」
 
杏は、樹に言われたまま
先に車に乗り込んで
シートベルトを止めよう
とした、その時
 
運転席と助手席の間に
キラリと輝くものを見つけた。

それは、まりあが落とした
片方だけのピアス。

「ごめん杏・・・」

杏は、咄嗟に拾った高価な
ピアスをジーンズの
ポケットにしまってしまう。
 
この時、樹に隠さずにピアス
を見せて『これは何?』と
聞く事ができたなら
 
杏は、この先、あんなにも
悩む事は無かったかもしれない

・・・
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