蜜林檎 *Ⅱ*

彼の手

何が、雅也をあんなにも頑固に
させているのだろう。

杏はその理由さえ分かれば
雅也の心を動かす事が
できるような気がした。
 
知りたい・・・・

しかし、同時に知っては
いけないような気持ちになり
心に靄(もや)が立ちこめる。

それから、雅也と杏の間には
見えない線が引かれていた。
 
お互いに、適度の距離を保ち
生活を送る。
 
言い争いを避けるように
大切な事には全く触れずに
・・・

あれ以来、樹からの連絡は無く
杏の心は不安でいっぱいになり
とても苦しい。

杏は、他愛ない文章で
樹にメールを送ることにした。

本当に伝えたい気持ちは

何ひとつ書けない・・・

『・・・私は、今日はこれから
 お店のお手伝いです
 
 また、連絡します・・・』
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