蜜林檎 *Ⅱ*
悲しみ色

冷たい髪

『moment』のツアーは順調に
進み、やっと杏も樹に逢う事が
できない日の過ごし方を自分
なりに考え、なるべく忙しく
して寂しさを紛らわせながら
日常を送っていた。
 
ツアーも中盤に差し掛かり
樹がもうすぐ帰って来る。
 
その後、樹は8日間程の休みに
入る為、やっとゆっくり二人で
過ごす時間を持つ事ができる。
 
杏は毎朝、カレンダーを見つめ
ながらその日が来るのを楽しみ
に待っているのだった。
 
昨晩の杏は、瑠璃子と長電話を
した後にバイト帰りに借りて
きた映画のDVDを立続けに
2本見て、朝方、眠りについた
ところでお昼が来ようとして
いる今も、まだ深い眠りの中に
いた。

マンション前、一台のタクシー
が停車した。
 
その後部座席から降りた

背の高い男性は・・・樹。

樹は朝方、広島の宿泊していた
ホテルを出て新幹線で東京に
帰って来たのだった。 
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