蜜林檎 *Ⅱ*

言葉の重み

杏は、あの後の事を
よくは覚えていない。
  
ただひとつ、樹の深く
低い声が呟いた。
  
「俺はまた・・・
 大切な者を失くす」

『私は、イツキを見れない』

「イッキ、違う
 アンが貴方に告げた言葉の
 全ては真実じゃない
 
 今のアンは、彼女から聞いた
 話のせいで頭が混乱して
 動揺しているだけなの・・」

動揺・・・・・・
 
確かに杏は、まりあの真実味を
帯びた言葉に深く傷つき
頭の中が混乱していた。
 
冷静さを持たない、こんな状態
で投げかけた言葉は、鋭く尖る

でも、そんな中だからこそ
心の奥深くにある本当の想いが
言葉になる場合もある。

杏は、自分の放った言葉に
責任を取らなくてはいけない。

樹の事を一度も見れないまま
杏はその場を離れた。
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