蜜林檎 *Ⅱ*
樹の意識が戻った事を杏は
急いで皆に知らせた。
    
皆、樹の無事を心から喜び合う

意識が戻った事で、集中治療室
を出た樹は、今、個室のベッド
に横になる。

朝早く、百合と雅也が
樹に逢いに病室を訪れた。

「よう、イッキ、大丈夫か?
 おまえ
 宙を舞ったらしいなぁ
 そうそうできない体験だぞ」
    
「お父さん」

「はい、鳥になった気分で
 楽しめました」
  
そう言って樹は、雅也や百合の
方を見て苦笑した。

「もう、イッキまで、無理に
 笑い話にしなくていいのに
 ねえ、アン?」
 
「イツキの馬鹿
 何が鳥になった気分よ
 みんな、心配したんだよ
 死んじゃうんじゃないかって
 もう、目を覚ましてくれない
 ・・・・・・」

杏の瞳から、涙が

ポロリと落ちた。
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