蜜林檎 *Ⅱ*

綺麗な横顔

入院生活も五日を過ぎた頃
樹の知人、事務所の人
関係者の人達が、立ち代り
入れ代わり、病室に
お見舞いに来てくれた。

杏は、入院する樹の傍に
ずっと付いていたかったが
色々と詮索されては大変なので
樹の状態も落ち着いた為
病室には、事務所の人が
部屋の前で待機していてくれる
間の一時間程度だけ居る事が
できた。
  
そして、樹と二人きりの時間を
過ごした。

これではまるで、ツアーで
逢う事ができないのと同じ。
  
本当は、もっともっと

樹の傍に居たい。
  
でも、我侭は言えない。
  
毎日、樹の姿を見ることが
できるだけでも
良しとしなくてはいけない。
   
仕事を終えた杏は、その足で
病院へ向かう。
  
花屋さんに立ち寄った杏は
綺麗なガーベラの花を買う。
  
そして、果物を買う。
  
そう、蜜のいっぱい詰まった
林檎を手に取る。
  
樹に逢える・・・

杏の心は躍る。 
< 243 / 275 >

この作品をシェア

pagetop