蜜林檎 *Ⅱ*
未来無き愛

未来無き愛

樹は、二人の事を許して
もらえるまで、何度でも
雅也の元へ足を運ぶ覚悟
でいたにも拘らず

結局、杏の手を振り解く事
ができずに、彼女を自宅へ
連れて帰って来てしまった。

杏は、二人で過ごす
これからの日々に思いを馳せ
嬉しそうに、はしゃいでいるか
と思うと、打って変わり
黙ったまま、つらく悲しい表情
を浮かべた。

そして、虚しさ、寂しさから
逃れるように、樹の傍に近寄り
彼の腕にしがみつき頬を寄せて
甘えてみせた。

「イツキ・・・イツキ」

杏は、雅也の言葉を思い出した

『杏には
 これから話すつもりだ』

「イツキ・・・
 
 お父さんと
 何を話していたの?」

とても、樹の口からは
言えない・・・

軽々しく話すような内容では
ない。
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