ネバーランドへの片道切符
だけど、やっぱり相手を想っている微笑み。マユと過ごしているときに見せている以上に、笑ってる。


そっか、今、私はマユなんだ。彼はようやくマユを抱けるんだから、今に見せたことない顔を見せるんだ。


――ショック


やっぱり、マユが好きと知らされた。


――幻滅


自分から誘っておいて、実は彼が、こんなコトすると思わなかった。


――嬉しい


少し幻滅はした。
それでも、好きな人に抱かれる喜び。


マイナスとプラス感情が、ミキサーで綺麗に混ざり合う。


よく分からない、モヤモヤした感情が心にあった。


「ずっと抱きしめたかった。ずっとキスしたかった。ずっと抱きたかった。ずっと好きだ」


我慢していたものが、一気に来たのだろうか、切羽詰まった饒舌な彼がいる。


マユに対しての言葉。私はマユの変わりだけど、自分に言われているようで、鼓動の鳴る速度が上がっていく。


こんな甘い雰囲気に触れてしまったら、前の関係に戻れなくてもいい。


叶わない現実を認めることが大人なら、私たちは、まだ大人になれない。


彼も、前の関係に戻らない覚悟をして、私があげた、ネバーランドへの片道切符を持って私がくるのを待っている。


「うん、あたしもだよ」


何を考えているか、感情が見えないって周りに言われたことがあるケド。


今日は、彼のために笑顔を意識する。


マユみたいな、上品に笑う笑顔を作って嬉しい感情を伝える。


私も行くよ。片道切符を持って、さあ、逃げよう、ネバーランドへ――









名前もないレクイエム、そして序章 end
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