ネバーランドへの片道切符
だけど、嬉しい事ばかりではない。


行為中、無意識なのか、彼が姉の名前を呼ぶのだ。
身代わりにしていいとは言ったケド。
名前を呼ぶのは反則だ。


気分は一気に下がる。
姉じゃなく私が愛されていると塗り替えていたのに、メッキを剥がされた。


でもね。名前の後に、姉の声をマネて彼の名前を愛しく呼んであげるんだ。


そしたら、あの表情が乏しい彼が、目を細めて、すごーく、嬉しそうに笑ってくれる。


――苦しい。でもこの苦しみイヤじゃないんだ。


胸がキュンとするってきっとコレのことをいうんだ。


姉に向けられいるものなのに、
また、あたしはネバーランドに逃げたんだ。


逃げることに抵抗はないよ。


彼も、今抱いている人は、マユではないと分かっているハズだ。


けど、こうして私に姉の面影を重ねている。


彼も、ネバーランドにしがみついているんだ。


それにね。まだ現実を受け入れることが出来そうにないから――


一生この関係でもいいかもしれない。私って愛人向きかも……


なーんて。


無理だよ。ごまかしているだけで、心は痛いんだ。


だけど、やっぱり彼の腕の中は好きで――


だから三カ月たった今も、予備校がない日おばさんがパートで留守にしている時間を狙って、この現実逃避関係は続いてる。
< 12 / 28 >

この作品をシェア

pagetop