どこかで誰かが…
それからのエピソード
佳菜子は、出てはもらえぬ携帯に電話やメールを送り続けた。

しかし、

大沢からの返事はこない。


いっそのこと、大沢の家まで行って待ち伏せした方が確実に会えそうなのだが、

会いにまで行って、突き返されたなら…

それが怖くて、その一歩が踏み出せなかった。



高校3年を目前の春休み

午前中の練習を終え、

「じゃーね。」

「んー!お疲れ〜!」

佳菜子が部室を後にすると、

「…佳菜子、結局別れちゃったの?」

「自然消滅ってやつ?」

待ってましたとばかりに語り始める女子部員達。


「自然消滅って意味が分からないんだけど。なんで食い下がらないのかなぁ?」

「ホント!バスケしてる時とは大違いだよね…」

「次つきあうなら、バスケ部員がいーよ、きっと!」

「…でも、まさかこんなことになるとはね…」


そう思っているのは、誰よりも、佳菜子自身だったに違いない。


そのうち、ほとぼりが冷めた頃、またメールが届くと信じる佳菜子は、
それまでの、大沢からのメールに目を通してみたりする。


そこには、二人が“つきあっている”様子が克明に記されていて…

それまでの大沢との日々を思い浮かべ、ふと思うのだった。


“私は大沢の気持ちに、きちんと応えることができていたのだろうか?”

< 159 / 433 >

この作品をシェア

pagetop